入選

『人の愛を喰らって、その屍を生きてみろ』 加賀 成一
【 審査員長品評 】
お手軽な映画作りを思いついたものだ。階段席を使って、そこで二、三人で演じさせるコントを展開しそれを丸ごとカメラに収めれば、一編の映画になる! お手軽な、と最初に云ってしまったが、面白ければ、何の問題もない。ましてや、この大仰なタイトルに太刀打ち出来るものであれば。
だが、いかんせん、コントは二つに分断され、双方ともにさして面白くもないものになってしまった。いや、最初から、二つの挿話が考えられていたのだろう。つまりは、二組のカップル(と呼べるとして)が出来上がるのを見す見す手を拱くしかなかった主役の女に、このタイトルを云わせることが眼目であったのだから。だが、後の番があるために、本当は引き留めるべき友人を見す見す行かせてしまう中途半端さといい、余りにもわざとらしい設定の後半では、主役のキャラクターだけがひとり相撲をしてしまった。